好奇心とは?好奇心を高める方法と4つのタイプ
自分が新しい情報や知識を身につけた時にワクワクしたことはありませんか?
また幼い子どもと接していると純粋な眼差しで「なんで?なんで?」と何度も聞かれたことはありませんか?
子どもに限らず人は自分の周りにあるものについてもっと深く知りたいという内在的な欲求が存在し、本来は好奇心がないということは珍しいのかもしれません。
自分の知らない事や珍しい事、面白い事などに興味を持ち、積極的に知ろうとする人を好奇心旺盛などと形容することがありますが、今回の記事ではその「好奇心」を紐解いていきます。自分の好奇心の高め方やお子さんやチームメンバーなど身近な人たちの好奇心のあげ方のヒントになればと思います。
自らの好奇心がどのようなタイプに分類されるのか?好奇心の高め方等を研究結果を合わせて紹介していきます。
目次
1:好奇心の意味
2:好奇心の効果
3: 好奇心の研究の背景
3-1: バーライン氏の拡散的好奇心と特殊的好奇心
3-2: ローウェンスタイン教授の不快感を埋めるための好奇心
3-3: デシ教授の内在的な欲求としての好奇心
3-4: カシュダン教授の4タイプの好奇心
4: 好奇心の5つの側面
4-1: Joyous Exploration:心躍る探求
4-2: Deprivation Sensitivity:欠落感
4-3: Stress Tolerance:ストレス耐性
4-4: Social Curiosity:社会的好奇心
4-5: Thrill Seeking:高揚感の追求
5: 5つの側面から出てくる4つの好奇心タイプ
5-1: Fascinated:魅了タイプ:心躍る探究 / 社会的好奇心 / 高揚感の追求・高、欠落感・低
5-2: Problem Solvers:問題解決タイプ: 欠落感/ストレス耐性・高
5-3: Empathizers:共感タイプ:社会的好奇心・高、ストレス耐性/高揚感の追究・低
5-4: Avoiders:回避タイプ:全ての側面・低
6: 好奇心・探究心を育てる方法
6-1: どうして?もし、、、したら?どうやったら?(Why? What if,,,,? How might we?)を考える
6-2: 興味が湧く学びたいことを書き出す
6-3: 時間を作る
1:好奇心の意味
辞書で好奇心と引くと「好奇」という言葉で下記が出てきます。
好奇:珍しい物事などに強く興味や関心を向けること(三省堂 新明解国語辞典)
では、物事に強く興味や関心を持つとどのような効果が期待できるのか?
2:好奇心の効果
好奇心の研究は多くの心理学者が取り組んでおり、好奇心の効果に関しても研究結果が発表されています。
南カリフォルニア大学(USC)の研究 (※1)では、好奇心が高い子どもの方が後にIQが高くなるという結果が見受けられました。
この研究では1795人の3歳児を対象に調査が行われ、3歳の時点で好奇心が高いと判定された子どもたちは、11歳時点で計測されたIQが好奇心が低いと判定されたグループの子どもたちに比べて、IQテストで12ポイントも高いスコアを獲得しました。
上記以外にも、好奇心が活力につながるという研究や大学生の成績にも好影響を与えるという研究事例があります。
3:好奇心の研究の背景
様々な効果が発表されている好奇心ですが、心理学の分野では1950年代以降から様々な理論が発表され、好奇心をより深く理解する取り組みがなされてきました。
3-1:バーライン氏の拡散的好奇心と特殊的好奇心
1950年代に心理学者のバーライン氏によって発表された理論では、人の心理状況には「刺激が足りない状況」と「刺激がありすぎる状況」の2つの両極端な性質があり、好奇心はその間にあるバランスが取れた心地よい状況を探すためにあると考えられていました。
その理論の中で、好奇心には二つのタイプがあると発表されました。
退屈な状況を変えるために、色々なことを知りたいと思う「拡散的好奇心」と興奮を落ち着かせるために状況の理解を深め、一つの目的を持ってより深く物事を掘り下げる「特殊的好奇心」です。
3-2:ローウェンスタイン教授の不快感を埋めるための好奇心
バーライン氏の理論に加える形で1994年にはカーネギーメロン大学のローウェンスタイン教授は好奇心が生まれるのは情報不足や知識不足と論じました。
知識不足や情報不足の不快感を消去するために好奇心が発動するという理論です。
3-3:デシ教授の内在的な欲求としての好奇心
別の考え方では、1970年代にはロチェスター大学のデシ教授は不快な状況を避けるためではなく、探求したい、自分の能力をさらに伸ばしたいなどの内在的な欲求こそが好奇心に繋がっていると論じました。
3-4:カシュダン教授の4タイプの好奇心
異なる視点から好奇心を紐解いてきた上記の理論ですが、これらを統合するためにジョージメイソン大学のカシュダン教授は研究(※2)を通して、好奇心には5つの側面とその側面から導かれる4つの好奇心タイプがあると論じています。
4: 好奇心の5つの側面
カシュダン教授は好奇心には5つの側面があると発表しました。
4-1: Joyous Exploration:心躍る探求
自らの成長を求めることに貪欲であり、新たな情報や知識を学ぶことに喜びを感じる好奇心。
上記の好奇心に関する理論ではデシ教授が発表した内在的な欲求に関する理論と関連しており、この側面を強く持っている人は学ぶこと自体に喜びを得ており、生きる喜びを感じやすいタイプともいえます。
4-2: Deprivation Sensitivity:欠落感
知識や情報が足りないという不足感を補うための好奇心。
こちらはローウェンスタイン教授の理論にも関連しており、不足している状況を不快だと感じ、その不快感を補うために発生している好奇心となります。不快感が元にはなっていますが、この側面を強く持っている人は問題解決に取り組む姿勢が強く、知識・情報のギャップを埋めるために行動を尽くします。
4-3: Stress Tolerance:ストレス耐性
新しいことや珍しい物に対する不安を受け入れて活かそうとする好奇心。
この側面を強く持っている人は新しい場所やことを探求する際に生じる不安などの不快感が少なく、新しいことにも寛容に接し、活かそうとする姿勢がある。
4-4: Social Curiosity:社会的好奇心
周りの人がどのような思考や行動を取ろうとしているのかを人と話したり、聞いたり、観察したりすることで知ろうとする好奇心。
この側面が強く出る人は周りの人を見極めるために相手の情報を知ることに尽力する傾向があり、噂話などにも関心が強くなる場合もある。
4-5: Thrill Seeking:高揚感の追求
複雑で真新しい強烈な経験をするためには、物理的、社会的、金銭的なリスクを負うことも気にしない好奇心。
この側面が強い人はいい人生を歩むためには快楽を必要不可欠な要因として捉えている場合が多い。
5: 5つの側面から出てくる4つの好奇心タイプ
上記の5つの側面のうちどれか一つしか持っていない人はおらず、誰しも5つの側面を異なる割合で持ち合わせていると論じられています。カシュダン教授は3000人を対象に5つの側面を分析しました。
研究の中では3000人に「あなたはどのように好奇心を体験していますか?またはどのように好奇心は現れますか?」という質問を行っており、その回答を分析した結果、それぞれの組み合わせによって4つの好奇心タイプが存在すると発表しています。
5-1: Fascinated:魅了タイプ:心躍る探究 / 社会的好奇心 / 高揚感の追求・高、欠落感・低
このグループは心躍る探求、ストレス耐性、社会的好奇心、高揚感の追求が他のグループと比較しても高く、欠落感が他のグループに比べて低いグループです。
研究の28%の対象者がこのグループに属しており、人物像としては興味関心が広く、人生を冒険として捉えています。4つのグループの中でも最も教育水準が高く、経済的にも裕福な傾向があり、社会的な課題に取り組んだり、快楽などにも価値を感じているグループです。
5-2: Problem Solvers:問題解決タイプ: 欠落感/ストレス耐性・高
このグループは欠落感とストレス耐性が他のグループと比較して高い水準にあります。
研究の28%の対象者がこのグループに属しており、人物像としては努力家で、解くべき課題に取り組みながら学ぶのが大好きです。周りと関わるソーシャルメディアや他人への興味は強くなく、贅沢品などにも関心が薄いグループです。
5-3: Empathizers:共感タイプ:社会的好奇心・高、ストレス耐性/高揚感の追究・低
このグループは社会的好奇心が高く、ストレス耐性と高揚感の追求が他のグループに比べて低めという特徴を持っているグループです。
研究の25%の対象者がこのグループに属しており、人物像としては自らを内向的と思っており、人には興味があるものの、直接関わるよりも観察することを好みます。4つのグループのうちストレスを感じていると答えた人が2番目に多いグループであり、物事が計画されていないと不安を感じやすいグループです。
5-4: Avoiders:回避タイプ:全ての側面・低
このグループは全ての側面において他のグループと比べて低い傾向があるグループです。
研究の19%の対象者がこのグループに属しており、人物像としては最も好奇心が薄く、自信がなく、学歴も収入も4つのグループの中で低い傾向があります。どのグループの人物よりもストレスを感じており、困難な状況やわからないことを避ける傾向があるため、他のグループに比べても興味関心の分野が狭く、専門知識も限られるグループです。
好奇心を心理学の点から紐解いて5つの側面とそれらを組み合わせた4つの人物像タイプを紹介しましたが、皆さんはどの傾向が強く出るでしょうか。
上記の4つの人物像タイプからも見える通り、好奇心を持つことが人生においても大きなプラスにつながる傾向が読み取れます。
ではどのようにすれば好奇心を高めることができるのか。
6: 好奇心・探究心を育てる方法
6-1: どうして?もし、、、したら?どうやったら?(Why? What if,,,,? How might we?)を考える
好奇心を強く持っている人を想像する時に幼い子どもを連想する人もいるのではないでしょうか。
幼い子どもたちは常に自分の周りを観察しながら、自分なりの考えを発展させています。その元となっているのが質問です。
多くのことに疑問を持ってみることが好奇心のスタート地点にもなります。
質問の仕方はたくさんありますが、物事をより多角的に見るために活用できる3つのタイプの質問を紹介します。
WHY:どうして?の質問
「どうして〇〇は〇〇なのだろうか?」:既存のものがなぜそのような状態や仕組みになっているのかを考えることで、今まで知らなかった背景が見えてくることもたくさんあります。
子どもからどうして「空は青いの?」「どうして飛行機は空を飛べるの?」と聞かれてすぐ答えらる人は意外と限られているのではないでしょうか。
いつも見ている風景でも自分が知らない仕組みや理論がたくさん転がっています。
WHAT IF?:もし、、、したら?の質問
「もし〇〇が〇〇だとしたら?」の質問は視点を変えるために非常に有効的な質問です。既存の条件を変えることで今までになかった視点から物事を考えることができます。
HOW MIGHT WE?:どうやったら?の質問
「どうやったら〇〇を〇〇できるのか?」の質問はアイデアをたくさん生み出したい時に活用できる質問です。
ビジネス界や教育界でも注目されているデザイン思考の考え方でも上記の二つの質問を活用する場面があります。
What ifなどの質問を設定し、あえて別の設定で問題に取り組んでみたり、解決策を考えるためにHow might weという質問を考えることに注力することで既存の考え方とは異なる創造的な解決策が生まれやすいとも言われています。
6-2: 興味が湧く学びたいことを書き出す
質問を考えることで今まで考えもしていなかった様々な物事の背景や理論に気付く機会が増えます。
ただ調べるよりも、その中でも自分が学びたいことに注力することが重要です。
好奇心のもとには今知らない知識や情報を知りたいと思う欲求が含まれています。
皆さんはどのようなことに興味を持っていますか?
新しい知識を身につけるなら何について知りたいですか?
すでに多少知識がある分野でもっと深く知りたいと思っていることはなんですか?
自ら学びたいことを自分で選択することがモチベーションという観点でも重要だと言われています。自己決定理論とモチベーションに関して深く知りたい方は下記のブログをご覧ください。
6-3: 時間を作る
質問をすることや自ら学びたいことを選ぶことの重要性を紹介しましたが、それらを実現するには時間を作ることがとても重要です。
大事だとわかっていても明日から頑張る、忙しいから今はできないと決めてしまっていることがたくさんあるのではないでしょうか。
新しい視点や考え方、新しいことに触れるためにはその時間を作ることが重要です。
1日に数分からでもいいので自分が気になっていることに取り組む時間を作ってはいかがでしょうか。またはお子さんや同僚など自分以外の周りの人たちの好奇心を高めたいのであれば、一緒に時間を作る、調べる機会を作るなどに取り組んでみてください。
例えば、Googleや3Mなどそれぞれの分野で世界のトップ企業は社員に自らの興味関心を反映したプロジェクトに取り組む時間を作っています。この時間が与えられているため、より独創的なアイデアが生まれやすいと言われています。
皆さんも自らの生活に好奇心をくすぐるような時間帯を設けてみてはいかがでしょうか。
◆ 参考リソース:
(※1)USCの研究本文 (英語) :Stimulation Seeking and Intelligence: A Prospective Longitudinal Study https://www.apa.org/pubs/journals/releases/psp-824663.pdf
(※2)ジョージメイソン大学の研究本文(英語):The five-dimensional curiosity scale: Capturing the bandwidth of curiosity and identifying four unique subgroups of curious people https://www.m-rr.com/media/in-the-news/personality-journal-article-1.pdf