
学習性無力感とは?「何をやっても意味がない」から抜け出す3つの方法とセリグマンの犬の実験
皆さんはスランプに陥ってしまったことはありますか?
何をやっても上手く行かない。
そんな状況では「どうせ行動してもムダになるだけだ」と考えてしまうかもしれません。
こんなネガティブな思考を持っている場合は「学習性無力感」に陥っている可能性があります。今回のブログでは学習性無力感を紐解き、その乗り越え方もご紹介します。
学習性無力感とは?
「学習性無力感」とは、長い期間にわたって回避できないストレスを経験することで、その不快な状況から逃れようとする努力すら行わなくなってしまう現象です。
不快だとわかっている状況でも「自分は無力なんだ」と学習してしまい、抵抗や回避しなくなってしまう。この傾向を発見し、「学習性無力感」(英:learned helplessness)と名付けたのがポジティブ心理学者の父であるマーティン・セリグマンです。「学習性無気力」ではなく、「学習性無力感」が正式な現象の名称です。

学習性無力感を示した有名なセリグマンの犬の実験:人にも確認された無力感の影響と例
セリグマン教授が行なった有名な実験があります。
セリグマンの犬の実験とも呼ばれる実験では犬を対象に下記の実験が行われました。
Aグループは部屋内のパネルを押せば電気ショックが回避できる状況を経験した犬
Bグループは回避できない状況で電気ショックを受けた犬
上記を経験した後に犬を低めの壁で2つのエリアに仕切られた別の一つ部屋へと移動させました。犬が入れられたエリアに電気ショックが流れ、壁の反対側のエリアには電気ショックが流れないように部屋は設計されていました
すなわち、電気ショックが流れても低めの壁を飛び越えれば安全な場所へとすぐ移動できる環境です。
電気ショックを流した後の行動を観察したところ、Aグループの犬は低めの壁を飛び越え電気ショックを回避する行動にでましたが、驚くことにBグループの犬は電気ショックが流れても壁を飛び越えず、部屋に横たわり苦しみに耐える行動に出ました。
自分の行動では電気ショックは回避できないことを事前の状況で学習してしまったBグループの犬は、回避できる状況になっても何もしなくなってしまった。
同じような実験をセリグマン教授は人間を対象にも行なっています。電気ショックではなく、大きな音という不快な状況で実験を再現したところ、犬の実験と同じような傾向が見られました。
自分の行動では不快な状況を回避できないことを経験したグループは不快な状況が回避可能な別の環境に移されても、行動をせず諦めてしまうケースが多く見受けられました。


学習性無力感を乗り越える:ポジティブな姿勢を学習する
研究を紐解きながら無力感とは?を見てきましたが、では学習性無力感に陥ってしまった場合、またはこのような状況を避けるにはどのような行動が取れるのか。
セリグマン教授はポジティブな姿勢を身につけることが重要だと紹介しています。そして無力感を学習できるのと同様にポジティブな姿勢も学習可能だと考え、それをLearned Optimismとよんでいます。
ポジティブな姿勢は学習性無力感を防いだり、乗り越えるだけではなくパフォーマンスを全般的に向上させる効果があると様々な研究で発表されています。

無気力や無力感から抜け出すポジティブ思考を育む具体的な3つの行動
セリグマン教授と同じく、ポジティブ心理学者のショーン・エイカー氏がポジティブな姿勢を育む方法を紹介しており、今回はその中から具体的に下記の3つの行動を紹介します。
- 毎日その日に新しく気づいた「感謝すること」を3つ書き留める
- 毎日過去24時間のうちに起きたいい経験について書き留める
- 運動する
1. 毎日その日に新しく気づいた「感謝すること」を3つ書き留める
心理学者のロバート・エモンズ教授とマケル・マッカロー教授の研究では被験者に10週間に渡って感謝すべきことを毎週最大5つ書いてもらったところ、被験者は他のグループに比べてよりポジティブな世界観をもち、25%幸福度が高かった。
被験者が述べた感謝することは例えば下記のものが挙げられた。
・夕日が美しかった
・友人の優しさ
・素晴らしい親に対して
・好きな音楽を聞いた
この研究にも裏付けられるように些細なことであっても「感謝すること」等のポジティブなことに注意を払うことで、自分の生活の中で起きている良いことを探す力が養われます。日常生活をよりポジティブに捉える力が身につきます。箇条書きでもいいので、これを毎日継続させることでより前向きな姿勢が育まれます。
2. 毎日過去24時間のうちに起きたいい経験について書き留める
日々の終わりにその一日の中で起きた良い経験について振り返ります。そして2分間かけて、その経験について思い出せる詳細を全て書き出します。これを行うことで脳内でその出来事を再度経験すること同じポジティブな効果が得られると研究されています。21日間この方法を続けることで、脳内で変化が起きると言われています。
3. 運動すること
運動を継続することで自分の体に変化が起きていきます。以前より体重が落ちたり、体格がスマートになったり、走っても息が切れなくなったりと体感できる変化を起こせます。このように運動を続けることで自分の行動で変化を起こせることが認識できます。上記の研究でご紹介した通り、学習性無力感の根底にある「自分の行動は意味がない。変化に繋がらない」という考え方です。運動を行い、具体的な変化を実感することでこの根底的な考え方を覆せます。
自分は何をやっても意味がない等の無力感を感じ始めている方はぜひこちらの行動を試して見てください。
よりポジティブな世界観を育み、自らのパフォーマンスをあげることが可能です。ぜひ行動に移して見てください。
[参考資料]
ショーン・エイカー「幸福と成功の意外な関係」:ショーン・エイカーさんが自らの研究をまとめておもしろおかしく紹介しているTED Talkです。あっという間に時間が過ぎてしまうプレゼンで聞いているだけでも少しポジティブな気持ちになれます。日本語字幕もついてい流のでぜひご覧ください。
マーティン・セリグマンのポジティブ心理学:ポジティブ心理学の父として有名なマーティン・セリグマン教授のTED Talkです。こちらもユーモアを交えながらポジティブ心理学の成り立ちから説明しています。同じく日本語字幕がついているのでぜひご関心ある方はご覧ください。