
アクティブラーニング:能動的に探求する授業の研究効果は?
ここ数年の間で教育現場では『アクティブラーニング』という言葉を耳にする機会が増えてきました。生徒が今後必要なスキルを身につける効果が期待されているアクティブラーニングについて、今回のブログではアクティブラーニングとは何なのか?アクティブラーニングが注目される背景と海外で行われた研究結果を紹介いたします。
アクティブラーニングとは?
皆さんが今まで学校等で受けてきた授業を振り返ってみてください。多くの方が教師が教室の前に立って一方的に教科書を読みながら説明を進めたり、教えたりしている場面を思い浮かべたのではないでしょうか。
今までは単に聞く側として受け身になりがちであった授業のスタイルから生徒がよりアクティブ、より主導を握って能動的に進める学習方法をアクティブラーニングと定義しています。
生徒が自らの学習の主導を握って行うスタイルはいくつも形があり、多く活用される手法としては複数の小グループに別れて行うグループ・ディスカッション、グループワーク、プロジェクト型学習や授業内で生徒が討論を行うディベートなどが多く見受けられます。
ただ、単純にグループワークを行なったり、討論を取り入れるだけではなアクティブラーニングにはなりません。アクティブラーニングが注目されている背景とその意図を理解した上で取り入れなければ、表面上はグループワークなどを行なっていても本質的には今までの受動的な授業とは大きく変わらない学習になってしまいます。

アクティブラーニングが注目される背景は今後も続く激動の時代:
アクティブラーニングが注目されている背景には現在、大学をはじめ教育全体にて行われている教育改革が関わっており、それを理解するには今後社会で必要となってくるスキルを考える必要があります。
AI等のテクノロジーの進化によって今後も社会は大きく変化すると言われています。ただどのように変化していくのかは不明瞭であり、以前よりも不確実性が高く、より複雑に絡まっている様々な状況によって激動の時代が続くと言われています。
その時代を表す用語として『VUCA』という用語が近年使われるケースが増えてきました。
Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の頭文字をとって表されている時代には、今まで通りの方法だけでは通用しないことが増えていきます。
この時代では、常に変わりゆく時代に順応し、自ら考えて、自分たちで課題を発見し、新たな解を創造する力がより求められてきます。
過去の経済成長の主流であった大量生産時代に適応する人材を育てるために作られた教育手法だけでは今後のVUCA時代を乗り越えるためのスキルが身につきません。知識を持っているだけではなく、その知識をどのように活用するのか?またAIなどにも対抗できるように人として多様性の理解や創造性を発揮することが求められます。
このようなスキルが求められる時代だからこそ、教師からの知識を吸い込むだけではなく、それらを材料として、自ら考え、能動的に物事を進める力を育む上でアクティブラーニングが注目を受けています。


アクティブラーニングの効果
自ら考えて、物事を自分ごととして能動的に進める授業に取り組んでいる教育現場が世界中で増えています。アクティブラーニングを学校の一部として取り組んでいる学校が多いですが、中にはプロジェクト型学習を学校の中心的な活動として行なっている学校もあります。
例えば、米国のHigh Tech Highでは生徒がプロジェクトを進めて学び、毎年その年に生徒が取り組んだプロジェクトを外部の方も招いて発表会を行なっています。明確なアウトプットに向けて準備を進める生徒は自分のプロジェクトとして責任を持って自ら考え、自分たちのアイデアを発表していきます。社会に実在する環境問題に取り組んだり、ロケットに関して研究を行ったり授業や年度によって多様なプロジェクトに関わっていきます。その過程で生徒はどのような問題が存在するのかを観察し、何が原因なのかを考察し、フィールドワークやリサーチで情報を自ら集めて、自分達のアイデアや解を創造し、それを最終的にアウトプットとして表現していきます。
上記のようなプログラムでVUCA時代でも求められるスキルが身につく効果が期待されています。
アクティブラーニングの効果は上記の力を身につけるだけではなく、生徒の知識の保有や成績にも好影響を与えるという研究結果も発表されています。
ワシントン大学のScott Freeman氏が225個の研究をメタ分析した研究では、アクティブラーニングと従来の受動的な授業の結果を比べたところ、受動的な授業を受けた生徒の方が落第(A-F基準でD以下を取る)する可能性がアクティブラーニング型の授業を受けた生徒よりも55%も高いことが発表されました。また成績においてもアクティブラーニング型の授業を受けた生徒の方が高い成績をおさめていました。
Freeman氏はアクティブラーニングの効果を得るには生徒が主体的に学ぶようにしっかりと設計されている必要があるとも言及しています。世界中で事例が今後も増えていく中で、アクティブラーニングの効果や効果的な指導方法に関しても研究がさらに進むことが期待されています。