コミュニケーションの鍵は聴く力:傾聴力の鍛え方

コミュニケーションが上手な方を思い浮かべてください。

自分の考えを相手に効果的に伝えることができる喋りが上手な方を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。

伝える方法やスキルも非常に重要ですが、コミュニケーションは伝える側と受け止める側が交互にやりとりを行いながら成立していきます。

プレゼンテーションやピッチなど学校や企業でも伝えることに焦点を当てた研修や授業は多くみられますが、聴くスキルについて学んだ経験がある方は少ないのではないでしょうか。

今回のブログではコミュニケーションの鍵になる「聴く」という観点に焦点をあててご紹介します。

もくじ
1: 聴く力とは?
2: 聴く力を伸ばす方法
3: 聴く際に気を付ける点
4: まとめ

1. 聴く力とは?

学校のグループワーク、企業のミーティング、友達や同僚との雑談等を通して私たちは毎日たくさんの場面でお互いの話を聞いています。言葉だけを聞き、言葉通りにものごとを解釈することの難しさを多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか。

本音と建前という言葉があるように、話している言葉と伝えたい意図が必ずしも一致しているとは限りません。

例えば、約束を破って危ないことをしてしまった思春期の子どもに注意する場面で子どもがふてくされた表情で「はいはい、わかったよ」と強い口調で言い返してきた際に「よかった。わかってくれたんだ」と言葉通り受け止める方は少ないと思います。

傾聴するという言葉でも活用される「聴く」という言葉には耳で聴き、目で聴き、心で聴くという想いが込められています。

では「聴く」を実践することは具体的にどのようなことなのでしょうか。

耳で聴く

相手の声や言葉を受け止める上で、上記の例にもありますが単に言葉の意味だけではなく相手の声の大きさ、口調、言葉に乗せられた感情を耳で聴くことが重要になります。

目で聴く

発せられた言葉だけではなく、目から受け止める情報で相手の言葉の意味が読み取れることも多いです。相手の表情、姿勢、手や体の動かし方によってどのようなことを伝えようとしているのかを聴くことが大切です。

心で聴く

聴くを実践する上で耳や目で入ってくる情報を受け止めることと共に重要になってくるのが、相手の心に寄り添うことです。相手が伝えたいと思っていることは何なのか、その相手のことを支えるには何ができるのかを考え、聴く姿勢で表すことです。

例えば震える声で大切な人を失った話をしている悲しそうな友人の話を聴いた上で、耳や目で情報を受け止めながらどのようにしたら友人の心をサポートすることができるのか、考えて聴くことが心で聴くことになります。

UCLAの心理学名誉教授のアルバート・メラビアン氏が1960-70年代に発表した研究結果では、コミュニケーションをとる際には55%が視覚情報、38%が聴覚情報、7%が言語情報を重要視しているという結果がでています。

上記の研究結果が一人歩きしてしまい、全てのコミュニケーションに上記の数値を当てはめようとする方もいますが、メラビアン氏の研究を読み解くとより限定的な場面での数値であることが見受けられます。

メラビアン氏の研究では、言葉と仕草、表情や声のトーンが矛盾する状態で人がどの情報を優先するかという実験を行っています。例えば、言葉としては「大好きです」といいながらも声のトーンや表情は嫌悪感を示しながら伝えた時、相手側はどの情報を優先するかという研究です。

メラビアンの法則とも呼ばれる55%が視覚情報、38%が聴覚情報、7%が言語情報は必ずしも全てのコミュニケーションにおいて当てはまるものではないとしても、相手の話を聴くという観点では言語情報だけに頼らず、耳で聴き、目で聴き、心で聴くことの重要性がわかります。

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2. 聴く力を伸ばす方法

では具体的にどのようなことを意識し、行動に移すことで聴く力を伸ばすことができるのか。

自分の聞き方を考える

自分が普段どのような聞き方を実践しているのか、現時点の自分の状況を知ることがとても重要です。具体的に下記のポイントを読みながらご自身の現状を考えてみてください。

話している割合

相手と話している際にどうしても自分の話題に移していきたくなったり、相手の話を遮って自分の話をしてしまうこともあると思います。相手と話している際に自分がどれくらい話をしているのか割合を観察してみてください。もとから聴く側に回ることが多い方もいれば、喋る側が多い方もいると思います。聴く力を高めたいのであれば、意識的に聴く割合を高めることを試行してみてください。

肯定:受け入れる

相手の話に対してどのような反応をすることが多いですか?「でも」「しかし」など否定的な言葉から入ってしまう傾向がある方もいらっしゃいます。相手の話を聴く上ではまず肯定し、受け入れることが大切です。肯定し、受け入れることは相手の発言に必ずしも賛成するという意味ではなく、まず相手の考えや話を一旦受け入れる反応を試してみてください。相手が話している際に頷いて聴いていることを伝えたり、相手と視線を合わせたり、相手のことを見ていることを示し、話しやすい雰囲気をつくることが大切です。

相手の反応をよく見る

上記にも記載の通り、相手のことをみることで自らが聴く姿勢を持っていることを伝えることができます。さらに話している中で相手の反応を見ながら相手がどのような気持ちで話しているのか、場合によってはどのように相手の気持ちや心にもっと寄り添うことができるのかを考えながら自分の聴く姿勢に変化をつけることが効果的です。

好奇心をもって接する:質問をする

相手にもっと話したいと思ってもらったり、こちら側が聴きたいという姿勢を示すには好奇心をもって接することが重要です。これは聴いている際の表情や姿勢、仕草にも現れますが、行動としては質問をしてより詳細を伺うことも、聴くスキルの向上に繋がります。効果的な質問を行うことで相手が伝えたかったことをより明確に聴くことに繋がります。

3. 聴く際に気を付ける点

聴く際に陥ってしまう注意点もご紹介します。

相手の話を予測しない

多くの場合、私たちは会話をしている中で相手の話の着地点やオチを予測しながら会話をしています。必ずしもこれが悪いことではないのですが、相手の話の着地点を常に予測しつづけてしまうと相手が本当に伝えたかった情報とは異なる解釈を事前に自分の中で完結してしまう恐れがあります。効率的に考えることが染み付いている私たちは、一度解釈した結論を立証するデータを探してしまう癖があるからです。

推論の梯子とも呼ばれるこの癖・解釈についてもっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください:

推論のはしご―思い込みが強化されてしまう無意識の行動―
推論のはしご―思い込みが強化されてしまう無意識の行動―
もくじ 1. 推論のはしごとは? 2. 学習する組織 ピーター・センゲのメンタルモデルとは? 3. 事実ではなくメンタルモデルを構築することで予測する 4. 無.....

聴くに含まれる目の前にいる相手のことを耳、目、心で聴くことを実践することで自分勝手な解釈や予測を手放して相手のことを聴くことができます。

4. まとめ

今回のブログでは「聴く」というテーマを紐解いていきました。コミュニケーションでは主張する・話をすることに重きがおかれることが多いですが、ぜひもう片方の「聴く」に関しても実践いただければと思います。自分が聴いてもらえたという感覚はとても嬉しいことだと思います。

特に身近な人の話ほど聴くことを疎かにしてしまうことが多いのではないでしょうか。もう何年もの付き合いだから聞かなくても分かっていると結論づけるのではなく、人は常に成長し、進化し続けているからこそ、身近な家族や友人の話を改めて聴くことを意識すると新たな発見があるかもしれません。